2011年3月6日日曜日

ARRIFLEX


このカメラで僕はキャメラマンの基礎を学んだ。
ファインダーのすぐ横にバリアブルモーターがあり、10年ほど聞き続けた独特の駆動音を、今でも思いだすことができる。





報道編集室の勤務から撮影部の助手に。
それから半年もしないうちに突然の人事異動でキャメラマンに。
忘れもしない23才の5月10日。辞令をもらって報道撮影部に出勤すると、用意されていたカメラは輸入したばかりで、封も切っていない新品のARRI FLEXだった。

「僕がこんな新品のカメラ、使っていいのでしょうか!」
「早く自分のものにして、いい映像を撮れよ……」

今日、辞令をもらったばかりの僕に新品のカメラ……一生懸命で働いて、他局を圧倒するようなキャメラマンになろうと心に誓う。僕はこの放送局の思いやりを一生忘れない。
と決心したけれど、カメラという機械はそれほど優しくない。自分の目の高さを「映像」という厳粛な結果で突き返してくる。すべては自分の責任でカメラの問題ではないのだけれど、自由にならない、血が通わないと挫けたことが何度あったろうか……。


ARRI FLEXは永遠のものと思っていたし、漠然とこのカメラと人生を歩むものだと考えていたが、アッというまに今は画期的なデジタルカメラに置き変わった。やっと身体に馴染んだARRIを使えなくなるのは、ほんとうに辛くて悲しかった。ビデオカメラは画質の悪さとデザインの貧困さに辟易していた。なによりも大事なファインダーが最悪だった。「撮影」という凝視しなければならない作業が、ファインダーの性能によってできないのだから最悪だった。テレビ映像の甘さは、このファインダー性能の結果だと思う。家電メーカーの技術者には何度もそのことを話したのだが理解はされなかった。こんな姿勢では、いずれは外国製のカメラに駆逐されるだろうと思う。と思っていたら、最近のアメリカ製デジタルカメラは素晴らしく、フィルムのクヲリティに近づけるのは、これからの課題だけれど運用は簡便。キャメラマンにとっては選択肢が増えたのだから素晴らしいと思う。なによりもファインダーが素晴らしい。もう日本の家電製のカメラは使いたくない。
このARRIで撮影する事はもうないのかも知れないけれど、モーターの回る音を聞くと一瞬で23才の僕に戻れるのだ。二度と帰りたくない不安定なキャメラマンの時代だったけれど……。

カメラはARRI FLEX、RED ONE、Leica、Nikon F、Canon 5D。
飛行機は零戦とP51。
車はジャガー、昔のベンツ、BMW、ベントレー、ポルシェ(笑)。


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