「近畿は美しく」は毎日放送制作の関西ローカル番組。
いま、思いだしても楽しい取材の毎日だった……ほんとうに。
構成も絵コンテもない……その場で、風景を見つけて撮影をしながら組み立てる。
「1カット、いっときましょか……」
「そやね……あの道、逆光やね……あの光でレポーター、歩いてもらおうか……」
勿論、監督の頭の中にはだいたいの設計図があるので、基本的な「ネタ」はカッチリと撮影するが、それ以外は自由に撮影して、インタビューをする……
監督の指先が作りだす編集のテンポと音楽のリズムが組合わさると、あっと驚くほど上品な番組に仕上がるのだ。
十河監督とリポーター、そして毎日放送の関君。
ロケ車は撮影スタッフと照明チームの2台体制で東西南北へ……
監督は最近「わが心の歌舞伎座」という映画で海外の映画祭にも招待されていた。
素直な紳士で、仕事熱心な関君。いい撮影をするキャメラマンとして。いま関西では引っ張りだこ。
村祭りの日には、早々に撮影を切り上げて大急ぎで参加。
夜店を端から端まで丹念に見て歩くのが礼儀。
リンゴ飴、ベビーカステラ、トウモロコシ、たこ焼き、お好み焼きは定番。
水飴を練るCA君。技術の連中はなぜかリポーターに親切……
突然の風邪で監督はダウン。
ぶっ倒れた監督に「大丈夫ですか〜」と声を掛けながらも、
その横でカメラを廻し、10カットは稼ぐ僕たち……
その後、監督はユンケル2本で回復。
「この青空バックで撮影しましょう」と一言つぶやくと、1分も立たないうちにカメラも照明もスタンバイ完了。風のように機材を組み立てる「奴ら」だった。
お祭りではお祭りに遊び、風に吹かれれば歌をうたい……
桜のしたで車座になってお弁当をひろげ、一面の落葉には、その上で転げ廻る……
山の人に山の仕来りを聞き、海の人には波の高さを教わる……
青春という風があるなら、間違いなくこのスタッフ達は胸いっぱいにその風を吸い込んだに違いない……
もう一度、こんな「奴ら」と仕事をしてみたいと……今でも思う……
俺ひとりが遠くに来てしまったのか……待っていれば来るのかな……