2009年2月28日土曜日

甘い香りの事務所

チョコレートの甘い匂いが満ち満ちている事務所に出勤するのは切ないものがある。“初夏なのに甘さに酔えないほととぎす。”

結局、CMは別の方向で撮影の段取りが進んでいたが、N君の印刷したマーブルは段ボール箱に詰められて部屋の隅に置かれていた。

ちょうどその頃、経済番組の特集企画が進行中で、テーマは「1円玉の力」と「なぜ1ドル=360円だったのか」。その構成を考えるために分厚い“日本の近代史 昭和”を開き、巻末の歴史年表を眺めていたら、突然!アイディアが浮かんだ!「そうか!年表の数字をマーブルに印刷して、その年に対応する出来事を記載した表を別に用意したらどうだろう?」つまり、マーブルには(645)という数字が印刷されていて、別表には「大化の改新」とその解説が記載されている。そして覚えたら食べるのである。これは素晴らしい!
バレンタインデーにも、企業の広告にも使えるではないか!歴史年表や英語の単語なんて子供のときから覚えさせてもなんら害はない。掛算だってやらせればいい!
それ〜ということで本業は放り投げ、印刷屋さんと権利関係を押さえるために弁理士事務所に走ったのだった。

2009年2月26日木曜日

5分で終わったプレゼン。

 パラパラと繰られた徹夜の産物はパサリと机の上に投げ出された。
その投げ出しようはちょっと悲しかったが、CM制作途中のこんなことは日常茶飯事。プレゼンは5分で終わった。
 トボトボと会社に帰ると。N君がせっせとマーブルチョコに周波数を刷り込んでいる。
「お〜す。」
「お疲れです。どうやったですかプレゼン?」
「どのコンテもめちゃめちゃ、カッコよくて、素晴らしいって。」
「え!採用ですか?」
「‥‥、ラジオの業界を宣伝するような時にはいいんやけど‥‥。‥‥今回はあのラジオ局の聴取率を上げるためやそうで‥‥。別のパターンでもう一回、プレゼンすることになったよ。」
「それやったら、このマーブルどうします?」
「置いとけよ、3時に食べることにしょー。」
「こんなに沢山ですか?」
「え!お前!どれだけ買ったんや!」
「50本です。段ボール箱いっぱい!‥‥。」
 そんな会話をしながらもN君は周波数を刷り込んでいるのだ。春も終わりの午后四時。ちょっとオレンジに傾いた斜めの光線が窓から差し込んで、机の上に散乱するマーブルチョコの空箱がコロコロと風に揺れていた。
(マーブルチョコレートというのは商標で、正式には碁石形チョコレートらしい。)

2009年2月24日火曜日

すり切れた絵コンテ

 事務所移転のために書類を整理していたら沢山の絵コンテがでてきた。それは、あるラジオ局のTV用CMコンテ。

 オブザアイ創業当初の発注CMだったので、ただただ嬉しくて、ディレクターのN君と徹夜で仕上げた絵コンテだった。特に、ラジオの電波を“鎮静剤”に見立てた“ラジオは鎮静剤編”と“リンドバーグ編”はいいアイディアだったと今でも思う。
 「疲れた時には、30分以内にスイッチをお入れ下さい。」ラジオが鎮静剤。その錠剤は色とりどりのマーブルチョコレート。
コンテの仕上がりが余り素晴らしいので、これは絶対に採用になると確信して、テストも兼ねて撮影をしようということになり、マーブルにN君がインスタントレタリングでラジオ局の周波数を刷り込んでいく。今ならCGで簡単にできるのだが、当時のCG制作費は驚くほどの額だった。

 そして、いざ撮影してみるとこれがなかなかの仕上がり!
つまり、このCMプレゼンには絵コンテとテストピースの動画も加え、最強の材料が揃ったのだった。
いよいよプレゼン当日‥‥。