2010年8月17日火曜日

世界遺産にて。「タリン歴史地区」エストニア


ヘリコプターを使った撮影で一番の問題は振動。
いろいろな国で防振装置のお世話になったが、オーストリアでお願いした「Fly Hass」の、座席そのものを防振構造にしてしまう装置はなかなか素晴らしかったが、なによりもパイロットの腕とセンスが最高だった。Hass氏は007の映画で大活躍したパイロット。日本では阪急航空(現、朝日航洋)の野中さんが素晴らしい。

最近ではシネフレックスが文句なしで世界最高の防振装置だと思う。シネフレックスを最初に使ったのは日下ディレクターで、いつも落着いている日下氏が興奮していたので気にはなっていたが、飯塚ディレクターと石原キャメラマンのチームが撮った「モンサンミシェル」の空撮を見たときには、とてもヘリコプターからの空撮とは思えず、振動のない安定した映像に唖然として言葉を失った。
恐らく、放送関係者は等しく見入ったと思うが「世界遺産」という番組はそんな新機材を使うセンスと、使うことを許すフィロソフィーがあった。



日本では考えられないことだけれど、「よろしく〜」と航空会社に挨拶をしたら、トコトコと飛行場に…。駐機してあるヘリコプターのドアを勝手に開けて撮影装置取付けの調査を開始。車と同じ感覚。




ドクターヘリ。白いドアが左右に開いて患者さんを収容できる



高価なシネフレックスをそれほど頻繁には使えない。
そうなると普段は従来の防振装置を使うことになるが、この装置はどれほど頑張っても振動が取れない。そうなれば空撮はパイロット次第でもあるのだから、結局は「出たとこ勝負」。丹念に調べても時間の無駄だと思う。ということなので、できるだけ早く珈琲タイムにするのが正解……。


日本のある航空会社が、防衛関係の会社と共同で空撮用防振装置の開発をするので、世界遺産で使っているシネフレックスの情報を聞きたいと訪ねてきた。早々にシネフレックスの概要をお伝えしたら、自分たちの開発能力に相当な自信があるらしく、その程度のことは調べて知っているという勢いだった。人に物事を尋ねる態度ではないので、嘘の話しも交えて、大切な細かい運用の状況はかなりいい加減な事柄を伝えておいた。こんな失礼な連中にはそれで充分なのだ。技術者とパイロットだけであの複雑な撮影機材が開発できるのなら結構なこと……しかし技術者のあの自信は何処からくるのだろう。撮影はそんなに簡単なものではないのだが……結局はそんな会社の製品など使わなければいいだけの話しだが、シネフレックスとは開発の出発点がまるで違っている……残念。(未だに実用化されていない。日本の映像関係はいつもこんな調子。)
それにしても日本の防衛はこんな会社の製品で守られているのか……





この日は物静かな無理のない飛行をするパイロットで、とても気分のいい空撮だった。
空から見るフィンランド湾、遠くに見えるバルチック海も波静か。エストニアの歴史は激動そのものだったけれど、この国は優しい穏やかな国に違いないと思う。

2010年8月15日日曜日

Blue Airplane.


 バルト三国の一つ、エストニアの国旗は美しい。青、黒、白の組み合わせが静かで上品。青は青空と自由。黒は大地への想いと同時に、ソビエットに奪われていた独立と祖国への愛着を示し、白色は希望を表現している。

 昔から青という色が好きだった。世界遺産の撮影でエストニアのタリンに行った時、青空を背景に、この国旗が市役所の屋根に翻っているのを見たときの晴れ晴れしさを今でも思いだす。




 Blue
23時30分から放送していた「世界遺産」という名番組を育てた監督が立ち上げた会社の名前が「Blue」。美しい響きの会社で作品は清楚で上品。


 世界遺産という番組は放送時間帯も含めて変節してしまった。番組にはスポンサー、代理店、放送局の編成局や様々な部局の意向が働くので、放送時間やマイナーチェンジは致し方ないことではあるが、せめてこの監督が残っていれば、今ほどの観光番組にはならなかっただろうと思うことがある………。

    企業は一人の才能ある人間の存在を理解できない。
          スタッフという群は平等という幻想故に一人の人間の才能を伸ばせない。

僕は社員達といつも高い空を飛んでいたいと思う。
その監督への想いと僕の決意を忘れないための……Blue Airplane。


蝉時雨。


「蝉の声を聞きたかったら雁木坂に行けばいいよ。」とレストラン伊太利亜のシェフ。

事務所から信号を渡ってすぐの場所。ひんやりとした小さな林は、なるほどうるさい位の蝉時雨。



島崎藤村の「江戸繁昌記」に飯倉二丁目の雁木坂についての記述がある。ということは、この辺りは島崎藤村の散歩道だったのだ!




 残りの命は少ないのだろう、僕が近寄っても油蟬くんは忙しい。

 子供の頃、僕の夏休は昆虫採集の日々。ありとあらゆる虫と戯れたが、蝉には本当にお世話になった。なんと言っても蝉くんは飛んで逃げる航続距離が短いので追いかけやすい。それに蝶のようにデリケートではなく、ガ〜っと捕まえた瞬間のバタバタ感と悲鳴のような鳴声が、五歳の子供とはいえ、燃えたぎったハンターの血を満足させるものがある。もう少し静かなら、それほど取られることなかったろうに。
「蝉も鳴かずば取られまい」(笑)



 捕まえた蝉は恐らく何百匹。
ほんとうに申し訳ないことをしたと後悔したところで、雁木坂の頂上に着いていた。
短い階段だけれど、その階段の数だけ想いでを辿れる場所。

2010年8月11日水曜日

小さなお楽しみです。


 虎ノ門の神谷町には隠れた名店が其処此処に。
昔は立派な商店街があって、その名残で今でも細々ながら質の良い品物を商っている。



このアイスクリームもその一つ。
六本木の誰でも知っている、有名なお店に卸しているだけあって味は抜群に美味しい。
商社や大使館に勤務する外国の人達にも人気で、お昼が終わる頃には冬でも飛ぶように売れていく。撮影の帰りにはわざわざ遠回りして食べに行く。いつ行っても必ず買える安心感が最高。