2009年11月15日日曜日

世界遺産にて。「ローマの夕ご飯」

 ”やっぱりビールは一杯目だ!”
一日の撮影が終わったレストランでスタッフがうまそうにビールや酒を飲むのを見ているだけで気分はいい。


ルッコラの前菜






 最近の飛行機は快適。それでも東南アジア方面なら数時間で目的地に着くので気分的に楽だが、これがアフリカ、南アメリカ方面になるとそれなりの決意がいる。例えばブラジルに行くルートはいろいろあるが、一泊のトランジットがない場合は、”日本からシアトルに行って自販機でコーラを買って再び成田に帰ってくる”ほどの疲れた気分になる。
そこからペルーやアルゼンチンへ足を伸ばすとなると、サンパウロでのトランジットが加わるから更にド〜ッと疲れる。南に廻るシンガポールからケープタウンへ行くのも同じ気分。これが経費節減でアエロフロートにでも乗ったら、喜望峰に着く頃には人格も変わっている。
しかしこの程度で疲れている僕はまだまだ修行が足りない。世界遺産の矢口キャメラマンは別の番組で西アフリカで撮影後、東京に戻って次の日にカイロに出発したという物凄い経験をしているのだから。


シンプルな野菜にホッとする


魚とか蛸とか。これは安くて美味しい。


 放送局は海外取材が多い。特に東京は海外と直結しているから、明日の飛行機を電話一本で予約してニューヨーク、ロンドンへの出張などは日常茶飯事。「行ってき〜ます」「おつかれで〜す」の挨拶で見送りはないが、それは簡潔でサッパリしていて気分がいい。でもこれがローカル局になるとそうはいかない。まるで出征兵士を送り出すような風情になってしまう。
僕が助手の頃は機材運び兼見送り要員としてよく伊丹空港に行かされた。取材班の編成は三人なのだが、ディレクターとキャメラマン以外に必ずやや老年の偉い人が同行していた。僕はこの人を通訳だと思っていたが、どうして撮影助手や照明マンを連れて行かないのか不思議だった。あるときこれは放送局では常識の「福利厚生」なのだと先輩に教えてもらった。海外旅行も自由に行けるようになった時代。それぐらい自分の金で行けよ!と思った若かりし助手時代。
最近はスポンサーも先刻承知で「この番組制作費は御社の福利厚生には使わないで下さいネ〜。」と一言。
とにかく税関の彼方に消えてゆく取材班を見送るとドッ〜と疲れるのだが、帰国時も同じお迎えの儀式が待っている。


シャーベット アイスクリーム


 海外取材に行かない人たちは様々な憶測を口にする。
「タダで海外取材にいけるのいいな〜。」「飛行機の中では酒を飲み放題。」「結構なホテルに泊まって豪勢な食事。」「普通の観光客では見れないところが見れる‥…。」



 ”そんなに言うなら貴様が行ってみろ”
僕たちは撮影という仕事が目的で旅行見物ではないのだ。昔の福利厚生的大名取材と違って予算的に贅沢などできないし興味もない。空撮をやめたり、クレーンなどの特機を諦めたりして予算のやり繰りをしている。食べ物も贅沢しているわけではなく、その国の普通のご飯を食べている。
スポンサーが出しているお金は途中で抜かれて制作段階で使える予算は雀の涙ほど。少ない制作予算でどうして他局を圧倒できる映像を撮れというのだろう。
一ヶ月位のあいだ休みなく撮影していて、取材が終わるまで意識のほとんどは撮影に費やされる。「世界遺産」という番組の映像はミリ単位の構図を要求されるのだから‥…。
ディレクターはもっと大変で、構成、編集、ナレーションに加えて清算、それも海外通貨を日本円に換算するややこしい作業がある‥…。

固い話しになったので参考までに、英国のBBCでは一つの番組を撮影するのに1年。日本を代表する放送局の場合は1ヶ月。TBSは1ヶ月で3本の制作。(笑)
それでも僕たちは素麺とみそ汁、どんべえとカップヌードルだけでもカメラワークはNHKに負けないと思う。最近は自信ないけど。(笑)

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